あの頃セナ・プロに熱狂した方へ⑤

あの頃セナ・プロに熱狂した方へ⑤

2020年「F1」こうなってます

あの頃と比べて、2020年の「F1」のレースの方式は、随分と変わっています。
レースを安全かつ白熱したものにする為、レギュレーション変更が重ねられ、現在に至っています。

今回は、レース(予選・決勝)のお話をしようと思います。


グランプリのスケジュール

あの頃は年間16戦程でしたが、ここ数年は20戦を超え、2019年は21戦、2020年は22戦(当初。コロナの影響で17戦に変更)とレース数が増える傾向にあります。
将来的には、年間25戦まで増やす意向です。

各グランプリは金曜日~日曜日の3日間で行われます。
モナコGPだけは、木・土・日曜での開催です。
又、2020年の第13戦エリミア・ロマーニャGP(イモラ)は、変則日程とし、土・日曜の2日間での開催となりました。

3日間の大まかなスケジュールはこうなっています。

金曜日 午前  フリー走行 1(90分)
    午後  フリー走行 2(90分)
土曜日 午前  フリー走行 3(60分)
    午後  予選
日曜日 午後  決勝

あの頃は予選が2日間あったり、その前に予備予選があったり、決勝当日にもフリー走行があったりしましたが、随分すっきりしました。


予選について

一番大きく変わったのが予選の方法です。
あの頃は予選2日間、60分12周のベストタイムで決勝のグリッドが決められていましたね。
2003年から金曜と土曜に1台ずつ1周のみのアタックを行う方法に変更されました。金曜は土曜の予選の走行順を決めるものでしかなく、私(管理人)は「意味あるのかなぁ」と思いつつ見ていました。下位チームのTV露出を増やすための処置と思われますが、天候や路面の変化による不公平感や、タイヤやエンジンの消耗を避けるために走らないチームが出たり、あまり評判の良いものではありませんでした。

現在(2020年)の予選方式

2006年からは『ノックアウト方式』が導入され、細かい変更を加えつつ現在に至っています。私(管理人)はこのやり方、結構好きです。

今年(2020年)のルールに基づいて説明していきます。

まず「Q1」と呼ばれるセッションがエントリー全車(20台)が参加して行われます。
18分間でタイムの遅かった5台が振り落とされ(ノックアウト)、次のセッションへ進めません。
この5台のタイム順はそのまま決勝のグリッド(16位から20位)になります。

Q2」(15分)は、7分のインターバルをおいて残った15台で始まります。
ここでもタイム下位の5台が脱落し、15位から11位の決勝グリッドが決まります。
残った10台については、この「Q2」で一番早いタイムを出したタイヤを、決勝のスタートタイヤとして使う義務が課せられます。レースのタイヤ戦略がイメージできる時間でもあります。11位から20位の決勝タイヤに関しては、選択自由になります。

Q3」(12分)は8分のインターバルの後、開始されます。
ポールポジションを狙って、10台全車が全開アタックを繰り広げる、迫力のあるセッションです。
これで全グリッドが決定し、決勝レースに臨みます。


レース(決勝)について

レース中のレギュレーションについても、あの頃から多くの変更がなされています。
レース中の給油が復活したり(1994年~2010年)禁止されたり、タイヤ交換の禁止(2005年)があったり、タイヤに縦溝が入ったり(1998年~2008年)無くなったり、レースのショーアップ化や、安全性向上を目指したものでしたが、多少の混乱があったことは否めません。
現在のものは、これらの変更の集大成と言えるもので、細かい部分を除いてここ数年続いています。

レースであの頃と大きく違う点としては

パワーユニットの使用制限
前回でご説明した様にパワーユニットの6つの構成要素(ICE, TC, MGU-K, MGU-H, ES, CE)があります。それぞれ使用数が決められており、これを超えると決勝スタートのグリッド降格などのペナルティが課されます。
今年(2020年)は各3個まで使用可能です。グランプリ数が17戦ですから、ざっと5~6グランプリは持たせなければならない計算になります。
こんな丈夫なパワーユニットですので、白煙を上げてリタイヤみたいな事は少なくなっています。
又、あの頃の様に、予選用エンジンや鈴鹿スペシャルエンジンの様な事は無くなりました。

タイヤ交換の義務化
レース中は2種類以上の硬さのタイヤの使用が義務付けられています。
したがって、最低1回のピットインが必要になります。
雨天などで競技委員が「ウェットレース宣言」を出した場合、この義務は無くなります。

現在、タイヤはピレリによる一社供給です。
硬さの違うドライ用5種の内から、グランプリ毎に3種類がピレリによって指定されます。チームは決められたセット数を、3種類の組み合わせで選びます。
(2020年はコロナ禍の特例として、チームのタイヤセットもピレリが指定しています。)
雨用のウェットタイヤは路面の濡れ方により、インターミディエット(軽い雨)とウェット(本降り)の2種類が用意されています。

トラックリミットの厳格化
タイトなコーナーなどで、コースをはみ出して曲がり、タイムを縮める行為を防ぐため、各グランプリ毎に指定されたコーナー(2~3か所)で厳しく監視されます。レース中4回これを犯すと、タイム加算ペナルティなどが課されます。衝突回避などのやむを得ない場合は、適用されません。あの頃はみんなやってましたけどね(笑)

バーチャルセーフティーカー(VSC)の導入
2015年から導入されました。危険な位置でマシンが停止したり、破片が散乱したりした場合にはセーフティーカーが入るのはあの頃と同じですが、比較的短時間で処理が終わりそうだったり、危険度が少ないと競技委員長が判断した時にVSC」の指示が出されます。セーフティーカー自体は出ません。
「VSC」中は、全車が決められた速度で走行する事を義務とし、GPS等で厳しく管理されます。
セーフティーカーの際は、各車のタイム差(ギャップ)が帳消しになり、レースの展開が大きく変わることがありますが、「VSC」では全車の速度が決められますからギャップに変化はありません。

スタートシグナルの変化
あの頃は、赤から緑にシグナルが変ってスタートでしたが、1996年からはスタート5秒前から1秒ごと1つずつ赤ランプが灯っていき、5つの赤が消えた瞬間にスタートとなっています。これはフライング(ジャンプスタート)の判定を厳密に行う為に導入されたものです。

獲得ポイントの変更
あの頃は6位までが入賞で、優勝には10pt、2位が6pt・・・6位に1ptという割り振りでした。
現在は10位までが入賞とされ、ポイントの割り振りは以下の通りです。
優勝=25pt、2位=18pt、3位=15pt、4位=12pt、5位=10pt、6位=8pt、7位=6pt、8位=4pt、9位=2pt、10位=1pt
これ以外に、決勝レース中で一番早い周回タイムを記録し、かつ入賞したドライバーには ファーステストラップ・ポイント(1pt)が与えられます。

レースの時間制限
現在は、スタート後2時間で終了と規定されています。
悪天候などでレースが長くなり規定周回数に達しない場合でも、レースはその時間で打ち切られます。
又、赤旗などの中断があった場合でも、トータルで4時間を超える事はありません。

こんなところ以外は、あの頃とほぼ一緒です。


なんとなく、2020年のF1」の感じは掴めましたか?
まだまだ書き足りない事柄も多く在りますが、目立った相違点をチームドライバーマシンパワーユニット)、レースに分けて解説させて頂きました。
久しぶりの「F1」観戦のご参考にしていただければ幸いです。
あの頃の様に今の「F1」も面白いですよ!!

あの頃セナ・プロに熱狂した方へ:2020年「F1」こうなってます 了


2020年1月、モータージャーナリスト:今宮純さんがお亡くなりになりました。
あの頃のF1中継の解説者として、ご存知の方も多いと思います。
私にとってもモータースポーツに興味をもった頃に、様々な媒体での解説や記事によって知識を与えて頂いた伝道師の様な方でした。
氏のサイン入りの本は、私の蔵書の中でも大切にしている一冊です。
改めて感謝と共に、ご冥福をお祈りいたします。


参考文献
『『2020FIAフォーミュラ1世界選手権規則書
 /競技規則(2020.4.28付)日本語版』JAFモータースポーツ http://jaf-sports.jp/
2020FIAフォーミュラ1世界選手権規則書
 /技術規則(2020.6.19付)日本語版』JAFモータースポーツ http://jaf-sports.jp/