「ISO感度」と「ISOオート」
- 2021.03.21
- カメラ・レンズ
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初めての方のデジタル一眼講座:さぁ!フォトライフ始めましょう!!⑦
「露出」を決める3要素の中で、画質に直接関わってくるのが「ISO感度」です。
「いそかんど」「アイエスオーかんど」などと呼ばれています。
使いどころがとてもデリケートなものなので、その特徴を知っておく事が大事になります。
また、カメラの「ISO設定」にある「ISOオート」はどんなものなのか?
そのあたりをご説明しようと思います。
今回はそんなお話です。
① ISO感度って?
「ISO感度」は、デジタルカメラのイメージセンサー(映像センサー)が光を感じる能力を、数値で表したものです。
これは、それぞれのカメラの性能の範囲内で、自由に設定できます。
数値が高くなればより少ない光で「適正露出」が得られ、低くなればより多くの光が必要になります。
例えば、ある風景が「ISOを200」の設定で、「シャッター速度が1/125」・「絞り値がF5.6」で「適正露出」が得られたと仮定しましょう。
ここで「ISOを400」に変更した場合、光を感じる能力が一段階大きくなります。
この時の「適正露出」は「シャッター速度1/250」・「絞り値F5.6」もしくは「シャッター速度1/125」・「絞り値F8」というように変化します。
このように「露出」決める3つの要素、「ISO感度」「シャッター速度」「絞り値」は、互いに関係して変化するものだと、覚えておいてください。
この3要素の関係性については、以前に書いた記事があります。
こちらも参考にしてくださいね。
さぁ!フォトライフ始めましょう!!④:「露出」は「3色弁当」?
② ISO感度の特徴
「露出」決める3つの要素のうち「シャッター速度」を変えると、動く被写体を止めたり流したりして撮影できます。
「絞り値」を変化させると、ピントの合う前後の範囲(被写界深度)が、深くなったり浅くなったりします。
この2つは、撮れた写真を見てわかる変化ですよね。
それでは「ISO感度」を変えると、何がどう変わるか説明していきます。
上の段落でも触れていますが、「ISO感度」を上げると「シャッター速度」をその分速くできます。
曇りや室内など、暗い場所で撮影する場合「手ぶれ」が心配になりますが、「シャッター速度」を速くすることによってそれを防ぐことができます。
同様に「ISO感度」を上げると、レンズの「絞り値」をその分大きくできます。
小物や風景の撮影など、手前から奥までピントをしっかり合わせたい時に有利となります。
このように、撮影の時に大きなメリットがある「ISO感度」ですが、反対にデメリットも内包しています。
それは、「ISO感度」を上げていくと「画質」が落ちていく というものです。
画質が落ちるとは、細かい所まで綺麗に写らなくなり、全体が荒くザラついて「ノイズ」が目立つ写真になってしまう事をいいます。
なぜそんなことが起こるのか?また、どのくらいの「ISO感度」を使用すれば良いのか?
これから説明していきます。
③ ノイズとのっぺりの正体
ノイズがひどいラジオ放送を聴いていてボリュームを上げると、ノイズも一緒に大きくなりますよね。
「ISO感度」を上げるということは、イメージセンサー(映像センサー)が受けた信号を増幅する事ですから、
ラジオのボリュームを上げた時と同様に、目立たなかったノイズも一緒に増幅されて現れてしまいます。
これが「ノイズの正体」です。
また「ISO感度」を上げていくにつれ、細かい所が写らなくなり「のっぺり」とした印象の写真になっていきます。
これは、イメージセンサー(映像センサー)が取り込む光の量が減り、写真の情報が不足するために起こる現象です。
下の写真は、ある建物を「ISO感度」を変えて撮影して、拡大したものです。
クリックすると写真が大きくなりますので、ご覧ください。
「ISO感度」の数値が大きくなると、暗い部分にザラザラとした「ノイズ」が出るのがわかると思います。
また、手すりや模様などの細かい部分の描写が、甘くなってなんだか「のっぺり」していますね。
「ノイズ」と「のっぺり」の実例です。
こんな感じで、画質が劣化していきます。
④ 3つの「ISO感度」
「ISO感度」は、その数値によって画質の良し悪しが決まるということは、ご理解いただけたと思います。
では、最も画質のよい「ISO感度」はどれなのか?
カメラによって違うのですが、「ISO100」か「ISO200」の場合が多いようです。
これは「基準感度」と呼ばれ、最高の画質が得られる「ISO感度」として、カメラメーカーが推奨しているものです。
お使いのカメラの取説やカタログの仕様表に、「露出制御」という項目があると思いますので、その中の「ISO感度」を見て下さい。
大抵の場合「ISO100~6,400」とか「ISO200~40,000」という風に書いてあるのですが、この中の一番小さい数値が「基準感度」になります。
「基準感度」から「ISO感度」を上げていくと、画質の劣化が始まっていきます。
これに対し、カメラメーカーが「この範囲なら実用上画質に問題はない」と考えているものが「常用感度」です。
取説・カタログに「ISO100~6,400」「ISO200~40,000」などと書かれている範囲の「ISO感度」を指します。
普段の撮影にはこの「常用感度」を使います。
また、多くのカメラでは「常用感度」より大きい「ISO感度」が設定できるようになっています。
これは「拡張感度」というものです。
より小さい低感度側にも「拡張感度」を設定できる機種もあります。
こちらは、撮影時に暗すぎたり、明るすぎたりして「常用感度」では対応できない場合に使用します。
「画質はかなり悪くなるけれど、やむを得ない時は使える」くらいに思っておいて良いかと思います。
ざっくりまとめると、下表のようになります。
「基準感度」 | そのカメラで一番いい画質で撮れる感度 |
「実用感度」 | メーカーが画質の保証をしている感度(普段使う感度) |
「拡張感度」 | 「実用感度」の範囲外の感度(画質が悪いのであまり使わない) |
⑤ 基本は「ISOオート」がおすすめ
どんな機能なのか?
「ISOオート」は、撮影に最適な「ISO感度」をオートで決めてくれる大変便利な機能で、カメラの設定メニューで選べるようになっています。
この「ISOオート」がどんな風に「ISO感度」を決めているかは、次のようになります。
① 原則として一番画質のいい「基準感度」を維持する
② 「露出」が足りない時は感度を高くする
「露出を決める3要素」の1つをカメラ側で決めてくれるので、オート撮影と併用すれば操作項目が減り、撮影者は「画作り」に集中できます。
初心者の方には絶対おすすめな機能です!!
運動会や走るペットの撮影など、明るさが目まぐるしく変わる環境で威力を発揮してくれるでしょう。
また、とっさの撮影にも有効なので、私(管理人)も通常は「ISOオート」を使っています。
「基準値」と「上限値」
「ISOオート」では使用できる「ISO感度」の範囲を、あらかじめ決めておく事ができます。
メーカーや機種によって設定方法は異なりますが、多くは「基準値(下限値)」と「上限値」が選択できるようになっていて、その間で「ISOオート」を機能させます。
画質のため、一定以上の感度に上げたくない場合などに設定するのですが、「上限値」にはこれといった目安はありません。
カメラの性能によって、「ISO感度」による劣化の度合いが違ってきますから、ご自分で「これ位ならノイズがのっても許容範囲かな?」と思った辺りで決めるのが良いかと思います。
私(管理人)の経験でいうと、最近のカメラ(ここ5年くらい)なら「ISO3,200」あたりまでは、どの機種でも十分な画質を得られるのかなと感じています。
私のシーン別「ISO感度」
「ISOオート」での撮影をおすすめしていますが、もちろんマニュアルで「ISO感度」を設定する事も可能です。
どちらかと言うと、画質を最優先に考える必要がある場合や、夜景や屋内スポーツなど特別な状況での撮影で必要になる方法です。
ここでは、私(管理人)が使う「ISO感度」の、代表的なシチュエーションをあげていきます。
ご参考にどうぞ。
「ISO100」もしくは「ISO200」の基準感度
大きく写真を伸ばす場合や、商品撮影など細かいところまでしっかり写したい時など、画質を最優先するために設定します。
最も低い感度なので、シャッター速度か遅くなり「手ぶれ」を起こしがちですから「三脚」の使用が基本です。
―三脚を据えて、最高画質の風景写真をじっくり撮りたい―なんて方にもおすすめです。
「ISO400」~「ISO800」
「三脚」を使わない「手持ち撮影」をする時に設定します。
感度が上がった分、シャッター速度が速くなりますので「手ぶれ」を防げます。
旅行の時のスナップ写真や、明るめの室内での撮影、晴れた日のスポーツなど、多くのシーンに対応可能な普段使いの感度域です。
「ISO1,600」~「ISO3,200」
このあたりから、特殊なシーンで使う時が多くなってきます。
主に使用するのは、手持ちでの夜景や暗い室内などでしょうか。
これ以外に、ナイターのスポーツ撮影でもシャッター速度を上げるために、この位の感度を設定します。
「ISO3,200」~「ISO5,600」
私(管理人)のカメラ(オリンパス E-M1X)では、画質的にこのあたりまでが限界かなと思います。
もっとも、初期のデジカメの画質に比べたら、ものすごく綺麗なんですけどね。(いや本当に)
夜の街でのスナップや、公園などの暗い場所でのスポーツ、暗い所に隠れている野鳥を浮き出させる時などに使っています。
「ISO5,600」以上
基本的には使用しない感度域です。
このあたりから、「ノイズ」が目立ってきます。
どうしてもその被写体を撮影したいけれど「常用感度」では露出が足りない時、感度をなるべく上げないようにして使っています。
あくまでも、非常用のものとして認識しています。
「ISO感度」とはどんなものか、ご理解いただけましたでしょうか?
なんだか、ややこしいですよね。
なので最初はオートで撮影して、慣れて来たらマニュアルで色々な感度を試して見てください。
その中で画質の変化や使いどころが、感覚的にわかってくるかと思います。
一度クセを覚えてしまえば、強い味方になること請け合いです。
こちらの連載では、デジタル一眼初心者の方へ向け、カメラ・レンズの使い方、基礎的な写真の仕組みや撮り方など、”簡単に、分かりやすく”アドバイスしていこうと思います。
どうぞお付き合いください。
(了)
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