「インディカー」見てみませんか? part 1

「インディカー」見てみませんか? part 1

あの頃セナ・プロに熱狂した方へ 2021 ②

2021年3月26日、「F1」が開幕しました。
「メルセデス」VS.「レッドブル・ホンダ」のトップ争いや、7年ぶりの日本人ドライバー「角田祐樹」の快走など見どころ満載でしたね。
この先、どんなレースが繰り広げられるのか楽しみです。

そしていよいよ4月17日からは、2021年の「NTT インディカー・シリーズ」が始まります。
「インディ500」を2回制覇した佐藤琢磨を始め、元「F1」ドライバーも多数参戦していて、こちらも「F1」に負けず劣らず見どころ満載、白熱のレースシリーズです。

今回から折にふれ、「インディカー」の魅力もお話したいと思います。
「戻りF1」の方も、そうでない方も「インディカー」も見てみませんか?


今回はそんなお誘いです。


インディカーとは

アメリカン・オープンホイール・レースの最高峰です。
「あの頃」、「F1」に迫るほどの人気を博し、「CART(Championship Auto Racing Teams )」と呼ばれていたシリーズがありましたね。
1993年には「F1」ウィリアムスから移籍した「ナイジェル・マンセル」が、年間チャンピオンに輝いたのを覚えている方もいらっしゃるでしょう。
その「CART」が2008年に「IRL(Indy Racing League)」と統合し、現在の体制となりました。

2019年からは、日本のNTTがシリーズの冠スポンサーとなっています。

「F1」とのマシンの違い

「インディカー」はチーム間の格差をなるべく少なくして、白熱したレースを展開できるように様々な規則が設けられています。
ここでは、レースの主役「マシン」についてご説明します。

シャーシ(車体)
「F1」のシャーシは原則として各チームがそれぞれ製作しています。
「コンストラクター(車両製造者)・ランキング」争いも見どころの一つですね。

これに対し、現在「インディカー」では「ダラーラ」製の「DW12」(形式名IR-12)のワンメイクになっています。
この「DW12」は、新世代のインディ・マシンを目指して開発され、数種類のボディ形状プランの中から選ばれたものです。
それ以前の車体に比べ、安全性に重点を置いて設計され、2012年のシーズンから採用されています。

主要な空力パーツも共通化され「ロード(サーキット)」及び「ストリート(市街地)」用の「エアロパッケージ」と、「オーバル(楕円形のコース)」用の2種類が用意されています。
「オーバル」用のエアロは、それほどダウンフォースを必要としないので「F1」では想像できない位、薄く小さなウイングとなっています。
ウィングの調整範囲も規定されていて、各チームは許された範囲の空力・サスペンションなどのセッティングと、レースの戦略で戦う事になります。
こうしたレギュレーションで、マシンのチームによる差を小さくしてる訳ですね。

ギアボックスについては、「エックストラック」社製の6速のものを全車使用していて、ドライブ・バイ・ワイヤによるパドルシフトとなってます。

ブレーキについても、ルールで決められたサイズの製品(ディスク・パッド)をブレーキメーカー各社が制作して納めています。

昨シーズン(2020年)からは、ドライバーの頭部保護のため「ウィンドスクリーン」の装備が加えられました。
「F1」の「HALO(ヘイロー)」に風防が追加されたもので、外見上の大きなアクセントとなっています。
「ウィンドスクリーン」の開発には「F1」の「レッドブル」が積極的に協力をしました。
この事からわかるように「インディカー」と「F1」は共に連携し、更なる安全デバイスの開発を行っています。

2023年からはさらに安全に、さらに速く進化した次世代のシャーシに変更される予定です。

写真上が「ロード」「ストリート」用、下が「オーバル」用の「エアロパッケージ」を装着した「DW12」です。
フロントとリアのウィングの大きさや形状が違います。
安全のための「ウィンドスクリーン」が付いた独特のスタイルです。

(https://www.indycar.com/)
(https://www.indycar.com/)

エンジン
ホンダ」と「シボレー(ゼネラル・モータース)」の2社から供給される「2,200cc V6 ツインターボエンジン」です。
回転数の上限が12,000rpmまでとなっています。
また、最低重量が決められ、ターボチャージャーECU*は指定のものを使用しなければいけません。
走行するコースの種類によってターボのブースト圧が規定されていて、550~700馬力を発生します。
このエンジンが、「オーバル」コースで最高360㎞/hのスピードを生み出します。
「F1」とは違った、超ハイスピード・バトルが楽しめるのも「インディカー」の魅力ですね。

オーバーテイクが難しい「ロード」「ストリート」のレースでは、エンジンのパワーを一時的に増加させる「プッシュ・トゥ・パス(P2P)」が使用できます。
「P2P」は、ドライバーがステアリング上のボタンを押して作動させます。
コースによって違うのですが、最大で1レース200秒間の使用が可能です。

「ホンダ」「シボレー」それぞれにエンジンの味付けが違い、若干ですがコースによって得手不得手があるのも興味深いところです。
両社の「エンジン・マニュファクチャラー」のポイント争いにも注目です。

燃料には環境対策として「バイオエタノール(85%)」と「無鉛ガソリン(15%)」を混合したものが使用されています。
「あの頃」の「CART」では、メタノール燃料が使用されていましたが、火災の時に炎が見えず大変危険だったため、現在の混合燃料が採用されています。
これに倣い「F1」でも将来のパワーユニット(次々世代)では、化石燃料を合成燃料に切り替える検討をしてます。

2023年からは、シャーシの変更に合わせ、ハイブリッド形式の新パワーユニットになる予定です。

*ECU=Electronic Control Unit
各センサーからの情報を利用して、エンジンの動きを制御するコンピューターと理解していいと思います。
「インディカー」では、「F1」でもお馴染みの「マクラーレン」製のものが使われています。

タイヤ
「ブリヂストン」系列の「ファイアストン」が供給しています。

ドライ・タイヤには、コンパウンドが柔らかく寿命の短い「プライマリー」と、硬くて寿命の長い「オルタネート」の2種類があり、1レースの中で、両方のタイヤを2周以上使用する義務があります。
「プライマリー」のタイヤはサイドが赤く塗られていて、識別しやすいようになっています。
中継では「F1」のように「ソフトタイヤ」や「ハードタイヤ」ではなく、「レッドタイヤ」「ブラックタイヤ」と呼ばれることが多いです。
「プライマリー」「オルタネート」の本数や組み合わせは、レース毎に決まっていて「ファイアストン」から一律に配られます。

レイン・タイヤに関しては、1レース当たり最大5セットの支給となっています。
「オーバル」では雨が降ると危険防止のため、原則として赤旗が振られレースが中断されますので、レイン・タイヤの出番はありません。


今回は「インディカー」のマシンについてご説明しました。
「F1」と比べて、イコール・コンデションでレースを盛り上げるための規則が多い事が特徴です。
エンターテインメントに徹する、アメリカのレースに対する考え方がわかりますね。

次回は「インディカー」の予選方式ついて、お話しようと思います。

2020年の「F1」マシンとパワーユニットについて書いた記事があります。
ご参考までにこちらもどうぞ。


あの頃セナ・プロに熱狂された方へ ③ マシン編
あの頃セナ・プロに熱狂された方へ ④ パワーユニット編

参考サイト
The Official Site of the NTT INDYCAR SERIES 【公式サイト】
https://www.indycar.com/
2021 NTT INDYCAR SERIES Rulebook【ルールブック】
https://epaddock.indycar.com/

あの頃セナ・プロに熱狂した方へ 2021 ②/「インディーカー」見てみませんか? part 1(了)