「インディカー」見てみませんか? part 3

「インディカー」見てみませんか? part 3

あの頃セナ・プロに熱狂した方へ 2021 ⑤

F1」ファンの方へ向けて「インディカーシリーズ」の概要について連載しています。

今回はエンターテインメント性と、スピード感あふれる「レース」の見どころをご紹介したいと思います。

「F1」とはまた違った魅力をもつ「NTT インディカーシリーズ」も見てみませんか?

今回は、そんなお誘いです。


「レース」の見どころ


「Drivers! Start your engines!」
この掛け声でピットレーンに並んだマシンに火が入り、スタートに向けてコースへと向かいます。
「インディカー」のスタートは「F1」と違い、ローリングスタート方式(走りながらスタート)です。
「ロード」「ストリート」「オーバル」コースを問わず、基本は2列縦隊。「インディ500」では3列の隊列で行います。
高速オーバルのレースでは、スタート時に3台~4台が横並びで1コーナーに飛び込んでいくシーンも多く見られ、とにかく大迫力です。

レースの距離
「F1」では基本的にレース距離が300km±とされていますが、「インディカー」では各GPによってさまざまで、最短で約164マイル(102km)から、最長の500マイル(約312km)、平均で約230マイル(144km)位です。
コースによって平均速度が違いますから、レース時間が2時間前後(インディ500は3時間位)になるように距離の方で調整されています。
全周回の半分を消化した時点で、レース成立となります。

タイヤ交換義務・給油
レース中「レッドタイヤ(ソフト)」「ブラックタイヤ(ハード)」の2種両方を、最低2周装着して走る義務があります。
「インディカー」のマシンは燃料タンクが小さく規定されていて、何回かはレース中に給油のためのピットインを強いられますから、各ドライバーのタイヤ戦略も大きな注目点です。

ピットイン

「F1」では同じチームの2台が同じ場所を共有して、タイヤ交換を行いますね。
ピットクルーも20人前後いて、素早いピットワークを行っています。
「インディカー」ではマシンそれぞれのピットが、その時点でのポイント順で割り当てられており、マシンに触れる人数も7人までに制限されています。
これはピットの間隔が狭く、危険なための処置になります。
「F1」のような繊細な作業ではなく、力技のピットワーク。
凄いです。

スポッター

「オーバル」のレースでは、「スポッター」というチームクルーが大活躍します。
メインスタンドの屋根の上からコース全体を見渡し、ドライバーに周囲の状況を伝える役割です。
「オーバル」コースは走行ラインが複数あり、3台が横に並んでデッドヒートを繰り広げる! なんてことがよくあります。
マシンのバックミラーは小さくて死角も多いので、ドライバーは周囲がよく見えません。
「スポッター」はそれを補うため、ライバル車との位置関係やコースの状況(どこに破片が落ちてるとか)などを無線で伝えます。
レース中は、ほとんど喋りっぱなしって感じです。
インディカー公式アプリ」でも「スポッター」の声が聴けますので、一度お試しを。

フルコースコーション
マシンのスピンやクラッシュの破片が散乱してコースをふさいだ時、「F1」では「セーフティーカー」が宣言されますね。
「インディカー」ではこれを「フルコースコーション(フルコースイエロー)」と呼びます。
「オーバル」でのレースでは安全のため、小さなパーツの落下でも「フルコースコーション」が出されます。

コースの障害を取り除くまで「ペースカー」を先頭に全車が隊列を組み、安全な速度で走行しなければなりません。
これが宣言されると、それまでのマシンのタイム差が無くなりますので、宣言解除の際には、再びスタート時と同様な接近戦が繰り広げられます。

応援しているドライバーが、トップを独走してる時にこれが出ると「なんだよ~」って感じになりますけどね。

また、「フルコースコーション」中は全車の速度が遅くなりますので、タイム上有利な形のピットインになります。
このピットインが影響して、先頭のマシンが大きく順位を落としたり、意外なドライバーがトップに立ったり、レースの趨勢(すうせい)が大きく変わる要因にもなっています。

ポイントシステム
「インディカー」では、レースの最終順位に応じてドライバーにポイントが付与されます。
「F1」が上位10位までの付与に対して、「インディカー」では、基本的にスタートしたマシンすべてにポイントが与えられます。
レース序盤でクラッシュに巻き込まれ破損したマシンを、ガレージで修理をしてレースに復帰させ、1ポイントでも多く獲得しようと努力するドライバーもよく見られます。

ドライバーには順位に対するポイントの他、ポールポジション最多トップ周回トップ走行(1周でも)それぞれについてもポイントが与えられ、チャンピオン争いを盛り上げています。
「インディ500」では、付与されるポイントが2倍となっています。

ドライバーズポイント

1位2位3位4位5位6位7位8位9位10位11位
5040353230282624222019
12位13位14位15位16位17位18位19位20位21位22位
18171615141312111098
23位24位25位26位27位28位29位30位31位32位33位
76555555555

ポールポジション・・ 1ポイント
最多トップ周回・・・ 2ポイント
トップ走行・・・・・ 1ポイント
(1周以上)

安全対策
「インディカー」の長い歴史の中では、不幸な事故が多くありました。
その経験から進化を続けてきたインディカーの「安全対策」は、モータースポーツ界をリードしています。

その中で、目覚ましい活躍を見せてくれるのが、「AMR インディカー・セイフティ・チーム」です。
医師や救助、消防のエキスパート約20人で構成され、即座にアクシデントの現場に駆け付けます。
彼らの使用する3台の専用トラックとドクターカーは、全てのレースに帯同し必要な機材が満載されていています。

セイファーバリアの設置例
(https://www.indycar.com/)

一方、コースの安全対策も進んでいます。
「オーバル」ではコースが全て壁に囲まれていて、クラッシュの際にドライバーが受ける衝撃は、大変大きなものとなります。
ドライバーの保護のため、マシンの側にも衝撃を吸収する構造が取り入れられていますが、それに加えコースサイドの壁にも安全のための工夫が施されています。
セイファーバリア」(右図)と呼ばれるもので、現在モータースポーツで使用されている中では最高水準のものです。

滑らかに溶接された鋼製のフレームを、ポリウレタンのクッションで支える構造で、本来のコンクリート壁に設置する形になっています。
この「セイファーバリア」は、「インディカー」のレースが行われる全ての「オーバル」コースに導入されています。

 


今回は「インディカー」の「レース」についてお話しました。

現在(2021年)、日本で「NTT インディカーシリーズ」を中継・配信しているのは、CSの「GAORA」のみとなっています。
インディ経験者である松田次生松浦孝亮武藤英紀等、現役ドライバーを中心とした解説陣の体験に基づくレースや技術的な解説、海外ドライバー達との個人的なエピソードなど、真面目な感じの「F1」の中継とは違ったリラックスした雰囲気の放送です。
レース前のセレモニーで飛来する飛行機について、DAZNのF1中継でお馴染みの小倉茂徳が放送中にTwitterで解説したりして結構自由です。
生中継は時差の関係でこちらの深夜~早朝にかかる事が多く、睡魔と闘いながらの観戦となりますが、そんな事は気にならない楽しい中継だと思っています。
又、「GAORA」のサイトには「インディカー」の最新情報が満載のブログがありますので、こちらも要チェックです。

今月は、「F1」のモナコGP(5月23日)、「インディカー」のインディアナポリス500(5月30日)とビックレースが続きますね。
激闘が続く「メルセデス」VS.「レッドブル」、角田祐樹の初モナコ参戦、佐藤琢磨の3回目の優勝なるか?
どちらも目が離せません。

またまた、夜更かしが増えそうです。

こちらの記事も合わせてお読みください。

「インディカー」見てみませんか?part1 マシン 編
「インディカー」見てみませんか?part2 予選方式 編

参考サイト
The Official Site of the NTT INDYCAR SERIES 【公式サイト】
https://www.indycar.com/
2021 NTT INDYCAR SERIES Rulebook【ルールブック】
https://epaddock.indycar.com/

 あの頃セナ・プロに熱狂した方へ 2021 ⑤/「インディーカー」見てみませんか? part 3(了)