「インディカー」見てみませんか? part 5

「インディカー」見てみませんか? part 5

あの頃セナ・プロに熱狂した方へ 2021  ⑦

9月27日の早朝(日本時間)、「2021 NTTインディーカーシリーズ」の最終戦が、カリフォルニア州・ロングビーチで開催されました。

コロナの影響でレーススケジュールが変更されたり、観客数が制限される中で開始された今シーズンでしたが、チャンピオン争いが最終戦までもつれる、白熱したシーズンとなりました。

今回は、そんな2021年シーズンを私(管理人)の目線で振り返ってみたいと思います。


このブログでは昔「セナ・プロ」が活躍した「あの頃」、「F1」に熱狂した方へ、最近の「F1」などモータースポーツについて説明しています。
もう一度「F1」見てみませんか?「インディーカー」も!
    ↓

あの頃セナ・プロに熱狂した方へ:過去記事一覧


12月10日 追記

新チャンピオン誕生! ”いきなり”のアレックス・パロウ

今シーズンの年間ドライバーズチャンピオンに輝いたのは、チップ・ガナッシ・レーシングの アレックス・パロウ
スペイン出身、24才のドライバーです。

ここ数年、インディーカーではベテラン勢のチャンピオンが続いていましたから、久々の若手ドライバーの戴冠となりました。

2017年に全日本F3で日本デビューの後、2019年は日本のレース「スーパー・フォーミュラ(NAKAJIMA RACING)」や「スーパーGT(チーム郷)」で走っていました。
スーパーフォーミュラではルーキーながら、いきなり開幕戦で予選2位、第3戦 富士で優勝を飾るなど光る走りで、レースファンの注目を集めます。
全7戦中、ポールポジションを3回獲得。入賞4回でランキング3位となり、ルーキーオブザイヤーに輝きました。

翌年も日本での活躍を期待されていたのですが、その年のオフ、スーパーGTでドライブしていたチーム郷と、アメリカのデイル・コイン・レーシングとの提携により、2020年から「インディーカーシリーズ」への参戦が発表されました。

スーパーフォーミュラの中島 悟 監督も大変気に入っていたドライバーでしたし、契約更新は間違いないと思っていた矢先のニュースに大変驚いた事を覚えています。

2020年、インディーカーデビューするといきなり第3戦で表彰台を獲得。
トップ10フィニッシュは年間3回ながら、10位まであと少しというレースも多くあり、その素質を大きくアピールしました。

今年(2021年)、トップチームのひとつであるチップ・ガナッシ・レーシングに大抜擢され、2020年のチャンピオンであるスコット・ディクソンのチームメイトとなります。

すると、開幕戦のアラバマでいきなり優勝
それ以降もパロウの勢いは止まらず、全16戦で優勝3回、表彰台8回、トップ10フィニッシュ12回などの快進撃をみせます。
なかでも、ラスト2周までトップを走り、惜しくも優勝を逃した第6戦「インディ500」は印象に残ったレースです。
チャンピオン争いは最終戦までもつれましたが、勢いはパロウのものでした。
このレースを堅実に4位でフィニッシュし、年間チャンピオンを決めました。

経験がモノをいうインディーカーで、参戦2年目、いきなりの王座獲得は驚異的な快挙です。
私(管理人)の記憶では、チームメイトのディクソンが、チャンプカーからの移籍初年度に達成したのと(2003年)、F1でも活躍したジャック・ビルヌーブ位しか思い浮かびません(1995年)。
(間違っていたらごめんなさい。)

これだけいきなりで結果を出せるのは、彼が対応能力に優れ自身のパフォーマンスを、常に発揮できるドライバーである事の証明といえるでしょう。

ホンダ所属ドライバーでもあり、日本のレースを足掛かりに躍進。メディアとの受け答えにはいつも笑顔で臨むナイスガイ。
日本のレースファンが、応援したくなるドライバーです。

やるじゃん!グロージャン!!

昨年の「F1」第15戦、バーレーンGPのレース中にクラッシュし、大炎上したマシンから奇跡的に生還した ロマン・グロージャン

今年は、デイル・コイン・レーシングからインディカーシリーズに参戦しています。

F1時代の彼については、ハマると速いんだけど、荒っぽいドライビングでクラッシュを多発させ、自分も相手もリタイヤに追い込むというイメージが強く、比較的接触の多いインディカーでは、どんな事になるかお節介ながらも心配していました。

しかしそんな杞憂をよそに、第5戦「インディGP」では見事ポールポジションを獲得。決勝も2位になるなど速さの方で目立ちます。
ロード・ストリート コースでの走りはさすがに速く、参加初年度のハンデをものともせず、出走13戦でTOP10フィニッシュを6回決めています。(表彰台は3回。年間ランキングは15位)
軽い接触はインディカーの常識みたいなものですから、彼にとってやりやすいレース環境と言えるかもしれませんね。
相変わらず、接触等によるリタイヤは何回かありますけど...

なによりF1時代と違い、楽しそうな表情が多く見られ、見ているこちらもなんだか嬉しくなってきます。

シーズン前半は、家族の反対もあってオーバルコースでのレースは走りませんでしたが、第13戦「ゲートウェイ500」で初出走。
何度もオーバーテイクを繰り広げるなど、危なげなく260周を走り切り14位でフィニッシュしました。

来年(2022年)は、トップチームのアンドレッティ・オートスポートに移籍が決まっています。
「INDY500」での走りにも注目ですね。


今宮 純さんも、天国から彼にこう声を掛けているんじゃないでしょうか?

「やるじゃん!グロージャン!!」

F1解説でお馴染みだった 故・今宮 純 氏は、クラッシュ、リタイヤを繰り返すグロージャンを評して「だめじゃん。グロージャン」とよく言っていました。
反面、予選やレースでマシンがハマり、良い結果を出したグロージャン対しては「やるじゃん!グロージャン!」と喜んでいた事を思い出しました。
実際はどうであったかはわかりませんが、今宮さんはグロージャンが結構お気に入りだったんじゃないかと勝手に思っています。

帰って来た”スパイダーマン”

今年の「第105回インディアナポリス500(インディ500)」は、無観客だった昨年と違い、大観衆が見つめる中で開催されました。

このレースを制したのは、エリオ・カストロネベス(メイヤーシャンク・レーシング)です。

予選8位からスタートしたカストロネベスは、常にトップグループを走行しながらも無理に前へ出ず、チャンスを待ちます。
残り周回数が10周を切ったあたりで、周回遅れの車が発生させるタービュランス(乱気流)を上手く利用し、トップを走るアレックス・パロウとの一騎打ちに持ち込みました。
2台の攻防はラスト2周(199周目)、1コーナーでアウトから前へ出たカストロネベスに軍配が上がりました。
レースの展開やコースのコンディションを読み、耐える所は耐え、ベストなタイミングで仕掛ける。
キャリア20年以上の彼だからこそ出来た、絶妙のレース運びと言えるのではないでしょうか?

スタンドの観衆は総立ちで、カストロネベスのウィニングランに歓声を送りました。
メインストレートに車を止めた彼は、優勝時の恒例パフォーマンス ”スパイダーマン(観客席前の金網のぼり)” でそれに答えます。
その上、スタンドに手を振りながらメインストレートを走りだし、サーキット全体がカストロネベス一色に染まりました。

インディーカーの人気者 エリオ・カストロネベス が「インディ500」で勝つ。

コロナ禍で苦しんだレース界やファンに、レースの神様がくれた最高のご褒美に思えてなりません。


ここ数年のカストロネベスは、年に数戦出走のスポット参戦が続いていましたが、2022年はフル参戦すると発表がありました。

また”スパイダーマン”見られそうですね。

台頭する若い力

2021年のシーズンを全体的に振り返ってみると、ベテラン勢に元気がなく、参戦2~4年目の若いドライバーの台頭が目立つ印象です。

ジョセフ・ニューガーデンやスコット・ディクソン、ウィル・パワーといったベテラン勢もタイトル争いに絡んでいましたが、他を圧倒するような勢いが感じられず、またチャンピオン経験者のシモン・パジェノー、ライアン・ハンターレイ、アレクサンダー・ロッシといったあたりも未勝利に終わりました。

対照的に若手では、3勝のコルトン・ハータ、2勝のパトリシオ・オワード、マーカス・エリクソンなどがランキング上位に入り、元気なところをみせています。

その中でもハータは予選、レース共に光る走りを見せ、常にレースの主役といえる活躍でランキング5位を獲得しました。
インディカーの動きとは思えない挙動でコーナーを駆け抜ける天才的なドライビングは、見るものをワクワクさせるには充分です。
これからも、新チャンピオンのアレックス・パロウと共にインディカーをけん引していく存在であることには違いありません。
ホントに速いんですよ。

そんな若手の躍進もあり、新旧が渾然一体となった結構面白いシーズンだったと思います。

来年は、数人の王座経験者がチームを移籍するなど、勢力図に変化がみられます。
どんなシーズンになるのか?今から楽しみですね。

がんばれ!佐藤琢磨

「インディ500」2度のウィナー・佐藤琢磨の2021年は、見ているファンにとって”消化不良”といえるシーズンでした。

シーズン当初から、フリー走行や予選ではセッティングに苦しみ下位に沈むことが多く、レースでは後ろから果敢にオーバーテイクを繰り返し、なんとかTOP10フィニッシュをする。(16戦中8回)
そんな印象です。
これは、佐藤担当のメカニックの交代が大きな要因かなと思っています。

また、チームの作戦担当(ストラテジスト)がとる保守的な戦略と、”No Attack. No Chance.”の佐藤とは呼吸が合わない感じで、レース後に深刻な顔で話し込むシーンが多く思い出されます。
(特にインディ500で見せた不満気な表情は印象的でした)

そんな事も影響してか、今シーズン限りで4年間在籍したレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングを離れる事になりました。

11月18日現在、佐藤琢磨の2022年シーズンについての発表はありませんが、新チームとの契約が最終段階であると複数の報道があります。
吉報を期待したいですね。

優勝こそないシーズンでしたが、苦しみながらもランキングは11位。
年間を通して最も多くのオーバーテイクをしたドライバーに贈られる「TAGホイヤー Don’t Crack Under Pressure」アワードを獲得しました。
これは、まだまだ佐藤が速さを失っていないことの証明といえるでしょう。

来年は、心機一転。
琢磨らしい、果敢な走りを!

がんばれ!琢磨!!

12月9日、日本のレースファンとして嬉しいニュースが飛び込んで来ました!

「デイル・コイン・レーシング」から、来年度(2022年)のドライバーとして、佐藤琢磨 の加入が発表されました。

どうなる事かと気を揉んでいましたが、来年も琢磨の走りが見られる事となり一安心です。

「デイル・コイン・レーシング」は、創立が1989年と長い歴史を持ち、過去には黒沢琢哉、ヒロ松下といった日本人や、1990年の「F1 日本グランプリ」で表彰台に上った ロベルト・モレノ、日本で走っていた ミハエル・クルムが在籍した、日本ともゆかりの深いチームです。

今回取り上げた、新チャンピオンの アレックス・パロウや、「やるじゃん」グロージャンもインディカーのキャリアをここから始めています。

新たな環境で、躍動する 佐藤琢磨 を来年も応援したいと思います



来る2022年の「NTTインディーカーシリーズ」は、2月27日「セントピータースバーグ」で開幕します。

再来年(2023年)からは、マシン・エンジン共に大きなレギュレーション変更が予定されているため、使い慣れたマシン、DW-12での最後のシーズンです。
各チームが、持てる技術と経験を最大限に発揮するシーズンとなるでしょう。

若手たちが主役に躍り出るか?ベテラン勢の巻き返しなるか?
”スパイダーマン”は再び登場するのか?琢磨の活躍は?

来年も見どころ満載です。

ご一緒に「F1」だけでなく「インディーカー」も見てみませんか?

参考サイト
The Official Site of the NTT INDYCAR SERIES 【公式サイト】
https://www.indycar.com/

あの頃セナ・プロに熱狂した方へ 2021  ⑦「インディカー」見てみませんか? part 5 (了)