2022年「F1」マシン 新世代へ

2022年「F1」マシン 新世代へ

あの頃セナ・プロに熱狂した方へ 2022 

今年(2022年)の「F1」には、新たなレギュレーションで作られた新世代のマシンが登場します。
2月に入ってから、各チームの新車が発表され始めましたが、結構、格好いいと思っています。

F1の未来を見据えた、新マシンとはどんなものなのか?
かいつまんで、解説していきたいと思います。

今回は、そんなお話です。


マシンの新レギュレーションとは?

今回のレギュレーション変更は昨年(2021年)から適用される予定でしたが、世界的なコロナ渦の影響で1年遅れて行われるものです。
新しいレギュレーションには、大きく分けて以下の3つの狙いがあります。

1. オーバーテイクの増加
2. 環境への配慮
3. 安全性の更なる向上


それではそれぞれについて、どんな風にかわったのか説明していきますね。
  

2021年 イギリスGPで披露された新レギュレーションのコンセプトカー
F1.com /The official home of Formula 1®

1. オーバーテイクの増加

昨年(2021年)までのマシンでは、ダウンフォースのほとんどをフロント・リアウイングで得ていました。

ウィングを効果的に機能させるには、車体表面の気流をきれいに流してリアに導く必要があります。
それ以外の乱れた気流(タービュランス)は、リヤウィングに流さずに車体側面や後上方へ逃がします。
この時に発生するタービュランスが、車体後方や側面から激しく噴出して(アウトウォッシュ)、後続車の空力に悪影響を及ぼしていました。
タービュランスで、後続車のダウンフォースが減ってしまう訳ですね。

明らかに後続車の方が速い場合でも、先行車に接近した途端にペースが落ち、追い抜けないなんてシーンもここ数年多く見られました。

これを解消するために採用されたのが、今回のレギュレーションです。

要点としては
・フロント・リアのウィングを簡素化(ダウンフォースが減少)してアウトウォッシュを削減し、後続車への悪影響を小さくする
・減少したダウンフォースは、車体底面と路面の間を流れる気流を利用して補完する


これによって、オーバーテイクを増やして、白熱したレースにしようという考え方です。

1983年以降、禁止になっていた「グランドエフェクトカー」の復活です。

あの頃(セナ・プロ時代)のF1マシンの底面はまっ平になっていましたね。(フラットボトム)
底面と路面の間に流れる気流を利用し、ダウンフォースを発生させていました。
これを「ベンチュリー効果」と言います。
1994年のセナの事故以来、FIAは安全のためコーナリング・スピードの低下を目指し数々の対策を採りました。
その中にはマシンの底面に関する規制も含まれ、中央部に板を装着し(ステップボトム)ベンチュリー効果を少なくしていました。
これは、昨年まで長く続いていたものです。


今年のマシンはこれまでとは逆に、積極的に床下の気流を利用しています。
底部には下の写真のような、空力パーツが装着されて大きなダウンフォースを発生させます。
 

白い部分がトンネル状になって二股に分かれるなど、かなり複雑な形状です
F1.com /The official home of Formula 1®


これ以外にも新レギュレーションは、徹底的にアウトウォッシュ対策をとっています。

むき出しのタイヤはフォーミュラカーの特徴ですが、これもタービュランスの大きな発生源となっています。
これを減らすため、タイヤホイールには整流のためのカバーがつけられます。
以前にも採用されたことがあるものですから、ご記憶の方もいらっしゃるでしょう。

またフロントタイヤを包むように、オーバーホイール・ウィングレットと呼ばれる整流フィンが追加されてます。

タイヤのサイズは、昨年の直径13インチから18インチに拡大され、サイドウォールの低いロープロファイルのものに変更されました。
ロープロファイル・タイヤは剛性がアップされますから変形しづらく、マシンのエアロバランスに対する好影響が期待されます。

この様なマシン形状とタイヤの変更により後続車のダウンフォース減少は、20メートル離れた場合で4パーセント(2021年は35パーセント)、10メートルでは18パーセント(2021年は47パーセント)に抑えられると考えられています。
 
 

ホイールカバーとオーバーホイール・ウィングレットはこんな感じです
余分な整流板は一部を除いて禁止され、スッキリした外観ですね
F1.com /The official home of Formula 1®
 

翼端版が廃止され、3D形状となったリアウィング
F1.com /The official home of Formula 1®

FIAの目論見通りに、オーバーテイクが増えレースが盛り上がることを期待しましょう。

2. 環境への配慮

こちらの新レギュレーションは、燃料の変更です。

昨年までは、ガソリンに5.75パーセントのバイオエタノールを合成したものを使用していました。
今年からは、バイオエタノールの割合を10パーセントまで上げた「E10」という燃料に変更されます。
また、E10に使用されるエタノールはサステナブルな(持続可能)環境で製造されたものである事が規定されています。

バイオ燃料は、ガソリンに比べてパワーが落ちますから、各エンジンメーカーはそれに対応したPU(パワーユニット)を用意することになります。
失う馬力は、昨年比で20パーセント程度といいますから、結構大変なことですね。
(一部メーカーは、すでにそれを取り戻している(!)なんて報道もあります)

F1は2030年までに「カーボンニュートラル」を達成するという目標を掲げていますから、今年のレギュレーション変更は、そのひとつのステップというところでしょう。

あの頃(セナ・プロ時代)のF1は、燃料メーカーが専用の特殊ガソリンを持ち込んでいました。
ピットの周辺には「これは、絶対 体に悪いよね」という感じの排気ガスが充満してましたから、年を追う毎に、環境に優しくなっていると云うことですね。

3. 安全性の更なる向上

新レギュレーションでは、クラッシュ時の衝撃軽減が厳しく規定されました。

具体的な数値としては、正面からの衝撃を48パーセント、後方からのものを15パーセント減少させなければなりません。
これはレースカーとしては、かなり厳しい水準です。

1994年以来、F1は安全対策について特に力を注いできました。
更なる安全性の向上は、観戦する我々にとっても大いに歓迎できるものですよね。
 

F1マシンの安全デバイスについては、こちらの記事も参照してください。
2020年の記事ですが、基本的な部分は今年と共通です。

  ↓  ↓  ↓
あの頃セナ・プロに熱狂した方へ③/2020年「F1」こうなってます


今回は、新レギュレーションによるマシンの変更点を解説しました。

新しいマシンは、どんな走りを見せるのか?
各チームは、どんな切り口のマシンを作ってくるのか?

今からワクワクしています。

プレシーズンテストは、2月23日からスペイン・バルセロナで始まります。

ご一緒に今年も「F1」を楽しみましょう!!
  

F1.com /The official home of Formula 1®

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あの頃セナ・プロに熱狂した方へ:過去記事一覧


あの頃セナ・プロに熱狂した方へ 2022 ①/2022年「F1」マシン 新世代へ  (了)