2022年「F1」こうなってます PART 3

2022年「F1」こうなってます PART 3

「決勝レース」について/あの頃セナ・プロに熱狂した方へ 2022 

これまでの連載では、グランプリのスケジュールと予選方式についてお話してきました。

今回はいよいよゲランプリの目玉「決勝レース」についてです。
基本的には「あの頃」とあまり変わっていませんが、細かいところがちょいちょい違っていますので、そこら辺をご説明していきたいと思います。


この連載は「久しぶりに F1 見てみようかな?」なんて思っている方へ向け、セナ・プロが活躍していた「あの頃」との違いなんかを挟みつつ、初心者の方にもわかりやすい解説を目指しています。

ご一緒に「F1」楽しみませんか?


レースの距離と制限時間

レース距離
各グランプリの決勝レースの周回数は「305㎞を超えた時点での周回数」です。
「あの頃」の古館一郎 の名フレーズ「F1・300㎞ 劇場」のまんまですね。

ですが、モナコGPだけは例外的に「260㎞を超えた時点での周回数」となっています。
これは、このグランプリが低速な市街地コースであり、305㎞の距離でレースを行うと順調に進行したとしても下記の制限時間を超えてしまうためです。

レースの時間制限
「決勝レース」は「スタートしてから2時間」と決められています。
セーフティーカーの導入や悪天候などでレースのペースが落ち、2時間を超えてしまった場合には周回数が残っていてもその周でレース終了となります。

また、マシンが走れないほどの大雨や大きなクラッシュなどで「赤旗」が出て中断された場合は、「スタートしてから3時間」で打ち切られます。

タイヤ交換も見どころ! タイヤのルール

タイヤの使用義務
「決勝レース」で使用されるタイヤは「ハード」「ミディアム」「ソフト」3種類のドライタイヤと、雨用の「インターミディエート(軽い雨用)」「ウェット(雨用)」2種類のレインタイヤがあります。
それぞれのタイヤ側面には、ハード=白、ミディアム=黄色、ソフト=赤、インターミディエート=緑、ウェット=青のラインが入れられていて識別がしやすいようになっています。

ドライ・コンディション(路面が濡れていない状態)のレースでは、3種類のドライタイヤの内2種類を使用して走行する義務があります。
つまり、最低1回はピットインしてタイヤ交換を行わないといけないルールとなっているんですね。

大迫力のピットイン
タイヤ交換作業で数秒のミスがあったりすると、コース上でそれを取り返すのはすごく大変なことなりますから、各チームはトレーニングを積み万全の態勢でそれに備えています。
ここ数年でタイヤ交換に掛かる時間(マシンが止まって出ていくまで)は急激に早くなり、平均して3秒くらい、早いチームでは1.8秒なんて記録がでたりして「あの頃」とは大違いです。
18人のクルーが見せるレース中のハイライトの一つと言ってもいいでしょう。
凄いっすよ。

ウェット宣言
雨が降ってドライタイヤでの走行が危険と判断された場合は「ウェット(レース)宣言」が出され、レインタイヤが使用出来るようになります。
この時点でタイヤ交換義務が無くなり、どのタイヤも自由に使うことができるようになります。

レース中にこのウェット宣言が出たりすると、早めにレインに替えるチーム、周りの様子を見てから交換するチーム、ドライのままで頑張っちゃうチームに分かれ、それまでの展開が大きく替わり結構おもしろかったりします。
まぁ、凄い雨の場合はみんな一斉に交換しちゃいますけどね。

ドライタイヤには硬い方から「C1」「C2」「C3」「C4」「C5」の5種類があり、タイヤを製造する「ピレリ」がこの中からグランプリ毎に適したタイヤを3種類選び「ハード」「ミディアム」「ソフト」として持ち込んでいます。
ピレリは各チームに、この3種類を組み合わせて通常13セット、スプリントがある場合は12セット供給します。(全チーム同じセットです)


レインタイヤは「インターミディエート」4セット、「ウェット」3セットの供給です。(全戦共通)

タイヤルールにはこの他にも使用及び返却義務、追加のタイヤ供給など細かい規定がありますが、レースを見る分にはこれだけ覚えておけば大丈夫かと思います。

赤旗とセーフティカー

コース内にマシンがトラブルで停止したり、クラッシュなどによって破片が散乱してしまった場合、走行中のマシンやそれらを処理する作業員(マーシャル)の安全を確保しなけれはなりませんね。
そのために、F1ではいくつかの段階にわかれたルールがあります。

レッド・フラッグ(赤旗)
サーキットの安全設備が損傷したり、停止したマシンがコースをふさいでしまったり、大量のデブリ(破片)が撒き散らされたり、危険なほど雨が酷くなったり、負傷者が出るような大きな事故が発生した場合には、レースコントロールから「赤旗(レース中断)」が出され走行中のマシンは全てピットロードに戻らなければなりません。
再スタートは安全が確認された後に行われますが、状況によってはそのままレース終了と判断されることもあります。

セーフティカー
「赤旗」を出すほど状態が悪くないけれど、障害の取り除く(マシンをどけたり、破片を掃除したり)ため、コース全周にわたっての安全を確保したいとレースコントロールが判断した場合は「セーフティカー(以下:SC)」がコースに出て、安全な速度でマシンを率いて走行します。
この間は、隊列を整えるためにレースコントロールから出される指示以外の追い抜きは禁止です。
レース再開はSCがコースから退出してからになります。
中継画面にはSCが出動時に「SAFETY CAR」、退出時には「SAFETY CAR ENDING」と表示されます。

バーチャルセーフティカー
SCが出働するとそれまでの各車が築いたギャップが消え、展開が大きくかわってしまいます。
応援しているドライバーが独走している時なんかにSCが出ると、「なんだよぉ~!」って感じになりません?
そこら辺を考えた訳でもないんでしょうが、2015年から導入されたのがこの「バーチャルセーフティカー(以下:VSC)」です。
これは「あの頃」には無かったシステムですね。

「SC」を出すほどでもないトラブルであるけれど、コースの安全は確保したいとレースコントロールが判断した場合に導入されます。
バーチャル(仮想的)なセーフティーカーですから実際にセーフティカーは走らず、その宣言が各車のコックピットのモニターに表示されるようになっています。

「VSC」の間、マシンはあらかじめ決められた速度(コースやコーナー毎に違います)以下で走行することが義務付けられていています。
各マシンの速度はGPSで厳密に管理され、規定の速度を超えてしまうとペナルティの対象になってしまいますから、違反するドライバーはこれまでのところいないようです。

「VSC」は全てのマシンがそれまでの間隔を保ちつつ、安全な速度で周回できる優れたシステムでFIAの他カテゴリーでも導入が進んでいます。

2014年に起きた死亡事故が「VSC」導入のきっかけとなりました。
複数の要因が絡んだものでしたが、それまでドライバーの判断に頼ってた徐行区間での通過速度も原因のひとつとされています。
これを避けるため強制的に全車を確実に減速させ、安全確保を実現させたのがこの「VSC」です。

「決勝レース」の獲得ポイント

「あの頃」は「決勝レース」の結果によって、1位~6位までチームとドライバーにポイントが与えられていました。

現在は、その対象が広がり1位~10位までがポイントを獲得できます。
また10位までに入り、かつレース中に最速タイム(FL)を出したドライバーには1ポイントが追加で贈られる規定です。

各順位の獲得ポイントは下の表の通りです。

優勝2位3位4位5位6位7位8位9位10位
25㌽18㌽15㌽12㌽10㌽8㌽6㌽4㌽2㌽1㌽
FL=1ポイント追加

昨年のベルギーGPでは大雨のため、セーフティカー先導のたった3周でレースが終わってしまい、色々と物議になりました。

それを受けて今年から、悪天候などでレースが途中で終わってしまった場合のポイント規定が変更されました。
先頭のマシンが終えた周回によっていくつかのパターンがあり、対象順位と獲得ポイント数が変わってきます。

先頭のマシンが2周を終える前に中止した場合SC.VSCの先導周回を除く

レース成立とはならず、ノーポイントとなります。
 

先頭のマシンが2周を終えて、レース距離の25%未満で中止した場合

優勝2位3位4位5位
6㌽4㌽3㌽2㌽1㌽

 
先頭のマシンがレース距離25%以上を終えて、レース距離の50パーセント未満で中止した場合

優勝2位3位4位5位6位7位8位9位
13㌽10㌽8㌽6㌽5㌽4㌽3㌽2㌽1㌽

 
先頭のマシンがレース距離50%以上を終えて、レース距離の75パーセント未満で中止した場合

優勝2位3位4位5位6位7位8位9位10位
19㌽14㌽12㌽10㌽8㌽6㌽4㌽3㌽2㌽1㌽

 
先頭のマシンがレース距離の75%を終えた後、中止した場合


レースが成立したものとして、通常のポイントが与えられます。
 


ここまで細かく分けなくてもいいんじゃないかなぁとも思いますが...
まぁ、1シーズンで1回あるか無いかのことですから、なんとなくそんな決まりがあるんだなぁ程度に覚えておけばいいかと思います。

トラックリミット違反って?

ここ数年、厳しくなったルールです。

簡単にいうと「4輪ともコースをはみ出して走るな」というものです。
「あの頃」は、これに関する明確なルールがありませんでした、ってかみんなやってましたよね。

コーナーによっては、コースをはみ出した方が速いなんてこともありますから、これを防止するために厳しく取り締まられています。
グランプリ毎に違反を取られるコーナーが数か所決められていて、そこで違反をレース中に数回繰り返すとタイム加算などのペナルティが課されます。
予選時に違反を犯すと、そのラップタイムが抹消されるなど大変厳しいものです。

他車との接触を避ける時などでは違反を取られない事もありますが、それで順位を上げてしまった場合は即刻ポジションを戻さなければなりません。

見ている側からすると迫力のある走りで格好いいんですが、本来は走っちゃダメな場所ですから仕方ないですね。

F1を観るには?

2022年現在、日本でF1を視聴するには、以下の2つの方法があります。

1.「スカパー!」の「フジテレビNEXT」と契約
2.「DAZN」に加入

それぞれには料金が掛かります。
視聴環境(スカパー!、ケーブルテレビ、PC、スマホなど)の契約内容によって金額が変わってきますから、それぞれの公式サイトで確認してくださいね。

で、どちらにするのか悩みどころですよね。
それぞれの特徴をあげてみますと...

「フジテレビNEXT」では、川井一仁、森脇基恭、津川哲夫ら「あの頃」の中継でお馴染みだった面々が、相も変わらずのマニアックな解説で楽しませてくれています。(今宮さんがいたらなぁ)
各グランプリの間には、直近レースのふり返りや事後情報がわかる「F1グランプリニュース」も放送されています。
オフシーズンには総集編や「あの頃」のレース映像を使った特集番組もあって、一年を通して飽きさせません。

一方の「DAZN」ではネットの強みを生かし、画面を分割して同時に中継画像やオンボートカメラ、タイミングモニターなどが楽しめる「F1 ZONE」や、ニュースやドキュメンタリーなどのF1関連番組を多数配信するなどボリューム満点です。(見切れないほどの番組数です!)
また、「F1」だけでなく下位カテゴリーの「F2」「F3」も全戦中継。
こちらも魅力的ですね。

どちらのF1中継も、金曜から日曜のオールセッションが生中継されています。
あなたの観戦スタイルに合わせて選んでください。

私(管理人)は、中継を見る際にF1の公式スマホアプリを併用しています。
こちらも有料ですが、詳細なタイミングモニターや全マシンの位置がわかるトラックマップ、ドライバーのアクセルワークや速度が表示されるモードなど凄く優秀です。
国際映像に映らない下位の攻防も手に取るようにわかりますから、観戦のお供におススメです


今回は、2022年のF1「決勝レース」の代表的なルールを解説しました。

これ以外にも複雑なルールがたくさんありますが、とりあえずこれだけ覚えておけばレースを楽しんで頂けると思います。
観戦を重ねていけばルールは自然と頭に入ってきますから、最初から完璧に覚える必要はありません。
さぁ、新世代のマシンが繰り広げるバトルを楽しみましょう!

これからもF1を楽しむための記事を書いていきますので、ご愛読いただければ幸いです。


2022年のF1についてはこちらもお読み下さい。
  あの頃セナ・プロに熱狂した方へ 2022 ⓪:2022年 F1マシン新世代へ
  2022年「F1」こうなってます PART1 :グランプリのスケジュール
  2022年「F1」こうなってます PART2 :グランプリの予選方式 


参考文献
『Formula1-Sporting Regulations-2022-iss 5』(英語)
: FIA 国際自動車連盟 公式サイト https://www.fia.com/

2022年「F1」こうなってます PART 3 (了)


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