今年も「INDY500」が始まります

今年も「INDY500」が始まります

あの頃セナ・プロに熱狂した方へ 2022 

日本時間5月29日の深夜、「第106回 インディアナポリス500マイルレース(通称:INDY500)」がスタートします。

F1の「モナコGP」、WECの「ル・マン24時間耐久レース」と共に、世界三大レースと称される「INDY500」。
今年はどんなドラマが展開されるのか、今からそのスタートを待ちわびています。

世界中のモータースポーツファンの注目を集める「INDY500」とはどんなレースなのか?
その魅力を解説していきたいと思います。

今回は、そんなお話です。


特別なレース

「INDY500」はアメリカ合衆国インディアナ州インディアナポリスにある「インディアナポリス・モータースピードウェイ(以下IMS)」で開催されます。

第1回のレースは1911年。
以降、第二次大戦中の中断を挟み、今年で106回目を迎えるアメリカン・モータースポーツの代名詞ともいえるイベントです。
今年は「NTTインディカーシリーズ」の第5戦としてラインナップされています。

毎年、メモリアルデー(5月の最終月曜日:戦没将兵追悼記念日)の前日の日曜日に開催され、約40万人の観衆が詰めかけています。(2020年はコロナの影響で無観客)
その中には4世代にわたって同じ席をキープしている家族もいるほど、アメリカの伝統・文化として愛されているレースだといえます。
日本で同じ意味や規模を持つスポーツイベントは、ちょっと思いつかないですね。

5月に入ると、IMSのあるインディアナポリスの町は INDY500 一色になります。
シリーズの前戦である「インディアナポリスGP(IMS内のロードコースを使用)」を皮切りに翌週から練習走行が始まり、レース前週には2日間に渡る予選が行われるスケジュールです。
その合間をぬって、全ドライバーが参加する街中でのパレードを含む各種イベントやパーティーがあったり、ドライバーが移動する時には白バイの先導がついたり、地元の新聞社が分厚い特集誌を出したりと、街を挙げてこのレースを盛り上げます。
インディカーシリーズは通常2日間で全てのスケジュール(練習走行、予選、決勝レース)を消化していますから、約2週間をかける INDY500 がいかに特別なレースであるかがわかりますね。

いつか、この2週間を現地で体験してみたいなぁ…
 

https://www.indycar.com/

インディアナポリス・モータースピードウェイ

ここで、INDY500 が行われるIMSの歴史を簡単にご紹介します。

1900年代初頭、インディアナポリスはデトロイトのような自動車製造の街でした。
地元の実業家 カール・G・フィッシャーは、自動車産業の発展に伴い必要となるであろう テストコース の建設を思い立ちます。
仲間の実業家の協力を仰ぎ、インディアナポリス郊外に用地を確保。
1909年春、現在と変わらない長短の直線を4つのコーナーでつないだ、特徴的なオーバルコースの建設を始めます。
この形は草競馬のコースを参考にしたともいわれています。
 

https://www.indianapolismotorspeedway.com/

1909年8月12日、IMSは1周2.5マイル(約4.02㎞)コーナーには傾斜のついたコールタール舗装のコースとして完成しました。
当初の計画では、オーバルの内側にロードコースを併設する予定でしたが諸般の事情断念。
こちらは実に約90年後、2000年の完成まで待つことになります。
  

ロードコースの初期プラン
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IMSは、自動車開発用のテストコースだけではなく、レース場としての性格も持ち合わせてされており、4つのスタンドや観客用の駐車場(馬車用も(!))なども開場当時から整備されていました。
開場から2日後の14日には早速バイクのレースが開催されています。
  

IMSの初レース
https://www.indianapolismotorspeedway.com/events/

この時点でレース走行に路面が適していないのでは?という懸念があり、日程の途中でこのレースは中断されました。
19日から行われた初の自動車レースでこの懸念は現実のものとなり、路面の剥離が多発。
ついには複数の死亡事故に至りました。
事態を重く見た IMSは、安全確保のためコース全体をレンガで再舗装します。
約320万個のレンガが敷き詰められたコースは「ブリックヤード(レンガ工場?)」と呼ばれ、現在でもIMSの愛称として親しまれています。
  

1950年代の”ブリックヤード”
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その後レンガのコースは段階的にアスファルト舗装されましたが、スタート/フィニッシュラインの3フィートだけレンガを象徴として残してあります。
中継をご覧になる時に注目してみて下さいね。
いつからか、INDY500の優勝者はこのレンガにキスをすることが儀式となっています。
  

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翌1910年再開したIMSは、集客のためのイベントとしてメモリアルデー前日に盛大なレースを計画します。
1911年5月30日大観衆の見守る中、初の500マイルレースが行われました。
これが第1回のINDY500に当たります。
参加台数は40台、優勝者はレイ・ハルーン。
500マイルを6時間42分、平均時速74.602マイル(約120㎞/h)で走破しました。
現在のINDY500のレース時間は、3時間ちょっと超えくらいが多い感じですから、100年間で倍くらいのスピードアップをしたことになりますね。

第1回の500マイルレース
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IMSはその後、世界大戦による閉鎖や独自のレースシリーズの創設、2度のオーナー変更などの紆余曲折を経つつ、現在もアメリカン・モータースポーツの聖地としてインディカーシリーズやNASCARなどのビックレースが開催され、熱戦が繰り広げられています。

IMSはアメリカの国指定の文化財として登録されています。


なんだかすごいぞ「INDY500」

世界最速のレース

INDY500はとにかく速いレースです。
レース中の最高速度は370㎞/h超に達します。
平均速度は350㎞/hを超え、2.5マイルを1分程度で一周します。
これはコースを周回するレースとしては最速の部類に入り、幅の広いIMSのコースと相まって4台のマシンが、横に並んだまま全開でコーナーに突入するシーンも多く見られ迫力満点です!
 

予選方式も独特

INDY500の予選順位は他のレースとは違い1周のタイムではなく、コースを4周した平均速度で決まります。
これには、IMSがテストコースとして誕生した由来が関係していると思われます。
予選は2日の日程で行われ、1日目は12:00から17:50という長い時間が充てられています。
くじ引きで決まった順に1台ずつ計測(アテンプトといいます)をおこなった後、先着順で何度でもアテンプトが可能です。
お昼から夕方にかけての予選ですから天候や路面の温度が大きく変化し、ドライバーは最適なコンディションを見極めて再アテンプトに臨みます。
この駆け引きも見どころのひとつです。
今年(2022年)のルールでは、1日目の上位の12台が、2日目のポールポジションを決める最終予選へ進みます。(TOP12予選の後TOP6予選へ)
また参加台数が34台以上の場合、31番手以降のマシンが予選落ちを決めるため2日目に進みます。(ラストチャンス予選での上位3台が予選通過。今年の参加台数は33台ですので、全車が決勝レースに進みます)

予選も2日間たっぷり楽しめるんです。
 

優勝者は牛乳を飲む

「ウィナーは表彰式で牛乳を飲む」という、少々変わった儀式があります。
3時間超の激しいレースの後に、牛乳の一気飲みはキツそうですね。
事実、飲み切れずに途中で頭から被ってしまうドライバーも多く見受けます。

これは過去に3回INDY500を制したルイス・メイヤーがゴール後に牛乳を飲んだことが始めとされ、それを見た地元の酪農協会がスポンサーに付き現在まで続く伝統となりました。
最近では牛乳の種類(無脂肪とか低脂肪とか)をドライバーが希望できるようになっています。
牛乳を飲まないとその分の賞金は支給されないということです。
 

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スゴい賞金

優勝者には、物凄い金額の賞金が贈られます。
ここ数年はコロナの影響で総額は減少していますが、2017年に佐藤琢磨がINDY500で勝った時を例にあげるてみると、なんと優勝賞金が245万8129ドル!(約2億7200万円)
アメリカン・モータースポーツ最大のイベントにふさわしい金額ですね。

INDY500では、決勝順位以外にも予選順位や、レース中のリードラップ(1位になってフィニッシュラインを通過)の回数や最優秀新人など様々な賞金が設定されていて、2017年の総額は1317万ドル8359ドル(約14億5000万円)と膨大な額となっています。
ひと頃は「優勝は300万ドル」「予選さえ通過すれば20万ドル」なんて時代もありましたから、アメリカの景気によって金額は増減しているようです。
 

デカいトロフィー

優勝者には賞金以外に数々の商品が贈られますが、その中でも強烈な存在感を発しているのが、「ボルグワーナー・トロフィー」です。
実にアメリカンサイズ。
とにかくデカい!そしてなんだか凄い!
全高165㎝、重さ50kgの銀製で、周囲には歴代優勝ドライバーの顔の彫刻がびっしりと埋め込まれています。
優勝ドライバーの彫刻はその年のオフに作成され、翌年の開幕までにトロフィーに加えられます。
さすがにこれを毎年作って渡す訳にはいかないので(一説によると約4億円)、優勝者とそのチームにはミニチュアレプリカの「ベビー・ボーグ」が贈られます。
 

トロフィーの初登場は1936年
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過酷なツアー

INDY500で優勝したドライバーは、その夜から過酷なスケジュールをこなさなければなりません。
2017年の佐藤琢磨を例にあげると...
レースが終了した日曜の夜には、盛大な祝賀パーティーが深夜まで。
翌月曜日には、インディアナポリスからニューヨークへ移動。
火曜は早朝からTV出演や取材をこなし、証券取引所で鐘を鳴らした後にスポンサー関係の各種イベント。
水曜は2000マイルを移動し、ダラスでインディーカーのプロモーションイベントに参加。
NFLダラスカーボーイズの選手と交流。
木曜日には次レースが行われるデトロイトに移動の後、地元のプレス対応。
金曜からデトロイトGPの練習走行。
土日に2日連続で予選とレースのダブルヘッダー。
いやはや、まったく休む間もないですね。
「一週間空ければいいのに」と思わなくもないですが、それだけ全米が注目し熱狂するレースだという証でもあるんです。

全世界のファン注目の的、アメリカの国家的イベント「INDY500」。
今年もはじまります。


ここ数年、世界三大レースの2つ「INDY500」とF1の「モナコGP」は同日の開催となっています。

時差の関係で時間的に重複はしませんが、TVで観戦すると結構大変です。
今年の場合、金曜24:00からF1のFP2、その裏でINDY500のカーブデー(最終練習走行)が26:30まで。(2画面で対応)
日曜はF1の決勝スタートが22:00でそれが終わるころにINDY500のオープニングイベントが開始、レースのスタートが25:30。
レース終了が大体早朝の5:00位。(全て滞りなく進行した場合ですが)
そしてやってくる月曜日(泣)。

昼間寝りゃいいんでしょうが、プロ野球の交流戦がデーゲーム。
合間に食事して、用事を済ませて、風呂に入って...うーむ。
当日は上手くスケジュールを立て、寝落ちしないように準備万端・体力万全でINDY500を楽しみたいと思っています。(あ。どうでもいいですか?すみません。)

「INDY500」をTVで観戦するにはCS放送「GAORA」への加入が必要です。
加入方法や料金プランなどは環境によって違うようですので、公式ホームページ等でご確認ください。

また、NHKのBS1でも中継録画の放送があります。
こちらは、5月30日(月)18:15からの放送で、中継映像だけではなく独自のレポートも入った番組になっています。

どちらも楽しみですね!


参考 及び 画像出典
インディアナポリス・モータースピードウェイ 公式サイト(英語)
        https://www.indianapolismotorspeedway.com/
NTT インディーカーシリーズ 公式サイト(英語)
        https://www.indycar.com/

今年も「INDY500」が始まります/あの頃セナ・プロに熱狂した方へ 2022  (了)


あの感動を再び!